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人生100年時代の生き方を考える    ゆうゆう人生ドットコム

  
人生後半の生き方を考えるー2
 
 死を想う

(1)死を考えるとき」


◆ 身近な人の死にあったとき

老年期の配偶者との死別は、経済・法律上の問題、日常生活上の問題、健康管理の問題、精神面の問題(悲嘆のプロセスの理解と克服)などに直面する。生命の真実の価値をもっとも強く自覚する時は、身近な人、愛する人との別れを体験したとき。

宗教学者の山折哲雄氏は次のように述べている。
「近代の自然科学的な思考は、死後の世界や輪廻転生を証明出来ていないものとしてしまったため、それ以後、死後の世界を未知の領域に追いやり、魂の存在をも否定してしまった。

日本の風土に根ざした人生観は、あえて言えば、美しい自然との共感・同化の思想だったのではないか。日々に修養を怠ってはならないという儒教的人生訓、空や無の真実性を主張する無常観、そして個人の自立独尊を強調する西欧的価値観ーそのいずれの考えを受け入れる場合でも、日本人は体のどこかに美しい自然との共生という感覚を忍ばせてきたのではないだろうか。
 ◆「死」を考えることで人生を再認識しようとするとき

人は一生かかって生きることを学び続けなければならない。しかも、もっと驚くべきことは人は一生かかって死ぬことを学ばなければならないのだ。(セネカ=ローマ帝国ネロ皇帝の師 ストア派の哲人)
「死」を体験的に体験的に知ることはできないが、「死」を見つめることで、自分に残された時間は限られているという現実を再認識することができる。

人間は楽天的にできているところがあり、日常生活の中では死のことなど考えないのがむしろ普通である。
今の時代、自分がいつ死ぬか分からないのだから、もう少しマジメに死につい考えることも必要である。
   
末期疾患であるとの診断がなされ、告知された患者が、死を受け入れる精神状態について、E ・キューブラ・ロス女史は5段階説で説明している。
  1. 否認の段階 「そんな筈はない」「なぜ自分だけが死ななければならないのだ」という気持ちになり、孤独感や罪悪感、無為感といった内的葛藤が起きてくる。
  2. 怒りの段階 死という実存的状況に対する怒りと、自分の周囲の者 — 医師、看護師、肉親 ー に対する怒りがある。
  3. 取引の段階 死そのものと取引する状態になる。心理的技術をさまざま弄して、これを受け入れようとする。
  4. 落ち込みの段階 死がまぬかれないことを知り、誰を恨むこともできず、取引も出来ないことを知った上での落ち込み、抑うつ状態のことをいう。
  5. 受容の段階 死を受け入れる気になり、そこで、自分自身の存在や生き方について、否応なく目覚める。






(2)「死」についての考え


死を迎えるに当たっての人間心理には、別の見方もある。死が近づくと、誰でも期待と準備をする。ところが、死期が延びると、医師も家族も、ある種の欲求不満を感じ腹を立てたりする。ひとたび、死のプロセスが始まったら、その進行は早すぎても選すぎてもいけないのである。(『死の弾道学』グレサー&シユートロース)
「死」を見つめることで、自分に残された時間は限られているという現実を再認識することができる。

「死」のタブー化は、われわれの人生に対する自由な考え方を束縛する。死を自然な現象として受け止め、自由に語り合えることが、人間的なコミュニケーションを深めるためにも必要である。

輪廻転生の考え方~近代以前の人々は、死んだのち人間の魂は他界を訪れ、あの世のことを経験すると信じてきた。この世に蘇って、何らかの生命に生まれ変わるとも信じていた。死の彼方に輪廻転生の世界があることを自然に素朴に信じていたからこそ、近代以前の人々は日常的によりよい死を死ぬために心をくだき、新しい生命が永遠に続く世界を夢見てきたのではないだろうか。



(3)「死」の意味

  死の意味  アリエスは『死と歴史』により、西欧における死の意味を歴史的に辿った。
  • 第一のモデル 「飼いならされた死」~ギリシャ・ローマ時代から12世紀初頭までは、死はごく当然のこととされ、死にゆく人は、自ら死にゆく準備を整えて儀式を行ない、祈りの中に死を迎えた。
  • 第二のモデル 「自分自身の死」~12世紀中頃よりルネッサンス期に見られる概念である。ここでは死はきわめて個別的なこととされ、墓碑銘と遺言をもって死後に思いを寄せたのであった。残された家族は一定期間を喪に服して、悲嘆のプロセスを辿ったのである。
  • 第三のモデル 「遠くて近い死」~16世紀から17世紀にかけて見られる概念である。この時代、人は死を疎遠なものとして死を恐れるようになった反面、学問や芸術の対象として死は親近なものとされたのである。
  • 第四のモデル 「他者の死」あるいは「美化された死」~18世紀から19世紀に見られる概念である。ここでは死が美化され、死という別離は人生の最大の危機として芸術の対象となった。とくに19世紀に入ると死後の世界のイメージが重要になり、故人に再会するための場所と考えられた。

技術革新により新文明時代の到来がいわれる今日、新時代の状況にふさわしい死のモデルの概念構築ガ待望されている。生命の操作という神々の領域にまで手を伸ばしつつある新科学文明時代の死のモデルは、「生と調和した死」ではないかと思われる。(平山正美=自治医大積神医学・医療哲学助教授)    

死の意味は、時代という大きな流れの中で文化社会的な影響を受け規制されながら変わってゆくものであるが、個人レベルでも、年齢やおかれている状況、人生体験などの差異で死の意味は違うし、死を迎えるプロセスでも死の意味は異なる。

(4)「死」の準備教育

A・デーケンは、死を見つめることで、自分に与えられた時間が限られているという現実を再認識することができ、毎日をいかに生きるかを改めて考えることであるから、「死への準備教育」が重要と述べている。

   "死への準備教育十五の目標"A・デーケン》
第一の目標 精神的な打撃と麻痺状態~愛する人の死という衝撃により、一時的に現実感寛が麻療状態になる。
第二の目標 生涯を通じて自分自身の死を準備し、自分だけのかけがえのない死を全うできるように、死についての深い思索を促すこと。
第三の目標  悲嘆教育である。身近な愛する人を亡くした悲嘆の体験からいかに立ち直るかを教える悲嘆教育は、死への準備教育の大切な一領域である。 
第四の目標 極端な死への恐怖をノーマルなレベルにまで緩和し、その心理的負担を取り除くことである。  
第五の目標 死にまつわるタブーを取り除くことである。そうすることで、死という人生の重要な問題について自由に考えまた話すことができるようになり、死に結びついた情緒的問題の解決も可能となる。
第六の目標 自殺を考えている人の心理こついて理解を深め、自殺の予防法を考えることである。日本における75歳以上の自殺率は世界第一位である。老年期の自殺と並んで、昭和ひとけた生まれの男性の自殺も深刻な社会問題となりつつある。
第七の目標 告知と末期ガン患者の知る権利についての認識を徹底させることである。
第八の目標 死と死へのプロセスをめくる倫理的な問題への認識を促すことである。 
第九の目標 医学と法律に関わる諸問題についての理解を深めることである。具体的には死の定義と死の判定、脳死、臓器移植、献体、臓器の遺贈、遺言の作成といった問題が挙げられる。  
第十の目標   葬儀の役割について理解を深め、独自の葬儀の方法の準備をするための助けとすること。
第十ーの目標  時間の貴重さを発見し、人間の創造的次元を刺激し、価値観の見直しと再評価を促すことである。死を直視し、自己の有限性を自覚する時、残された時間をより有意義に過ごすための努力が始まる。
第十二の目標  死の芸術(アルス・モリエンデイ)を積極的に習得させ、第三の人生(老年期)を豊かなものとすることである。よき往生とは、時間をかけ努力して磨き上げるべき芸術である。その習得は老年期の大きな課題であり、現在をよりよく生きようとする努力にも通ずる。実り多い生と死を全うするためには、生命の量よりも生命の質をこそ重視すべきである。
第十三の目標  個人的な死の哲学の探求である。 
第十四の目標  宗教における死のさまざまな解釈を探ることである。「老い」と「死」に関する疑問は、科学や合理的思考、イデオロギーなどでは決して解決されないという。ほとんどすべての宗教は、生と死、苦悩、死後の生命などについての解釈を教義の中心に含んでいる。それぞれの教えの共通点や相違点を知ることにより、自身の死生観を考察し、深めるための刺激が得られる。 
第十五の目標  死後の生命の可能性について考察するよう促すことである。人生の意義も死の解釈によって決定的に異なってくる。もしも死によってすべてが無に帰するなら、生の営みも結局は不条理にすぎないが、死を新たな生への入口と考えるなら、人生のあらゆる労苦も決して無駄にならない。 
   


<悲嘆のプロセスの12段階> (『伴侶に先立たれ時』デーケン、重兼芳子編)

1.精神的な打撃と麻痺状態~愛する人の死という衝撃により、一時的に現実感寛が麻療状態になる。
2.否認~相手の死という事実を否定する。
3.パニック~身近な死に直面した恐怖から、極度のパニックに陥る。
4.怒りと不当感~不当な苦しみを負わされたという感情から、強い怒りを覚える
5.怒りとルサンチマン(恨み)~周囲の人々や故人に対して、敵意という形でやり場のない感情をぶつける。
6.罪意識~悲嘆の行為を代表する反応で、過去の行いを悔やみ、自分を責める。
7.空想形成、幻想~空想の中で故人がまだ生きているかのように思い込み、実生活でもそのように振舞う。
8.孤独感と抑うつ~健全な悲嘆のプロセスの一部分であるが、早く乗り越えようとする努力と周囲の援助が大切。て直面しようとする。
9. 精神的混乱とアパシー(無関心)~日々の生活目標を見失った空虚さから、どうしていいか分からなくなる。
10. あきらめ一受容~自分のおかれた状況を「あきらか」に見つめ、現実に勇気をもっ 。
11. 新しい希望-ユーモアと笑いの再発見~ユーモアと笑いは健康的な生活に欠かせない要素であり、その復活は、悲嘆のプロセスをうまく乗り切りつつあるしるしでもある。
12. 立ち直りの段階一新しいアイデンティティの誕生~以前の自分に戻るのではなく、苦悩に満ちた悲嘆のプロセスを経て、より充実した人格者として生まれ変わる。
 
     


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