人生100年時代とは
リンダ・グラットン/アンドリュー/スコットは著書『100年時代の人生戦略』において、長寿化が社会に一大革命をもたらすという提言をしている。
今までの教育→仕事→引退というステージが変わり、引退年齢が70~80歳と長くなるなど今までのステージが変わってくると予測される。
必要となるのは、画一的な生き方にとらわれず生涯変身を続けていくことだという。
老後の金銭的資産の必要性も重要だが、見えない資産が重要になるという。見えない資産とは、生産性資産、活力資産、変身資産の三つであり、この三つに投資を続け、自らを再創造することが100年ライフを充実させるカギといえるとのことである。 |
平均寿命は伸びているが
- 確かに平均寿命は、各国で伸びを示しており、日本の平均寿命の伸びは世界各国のなかでもひときわ目立っている。ただし、コロナ禍の影響と思われるが、2021年は僅かだが減少している。
- 100歳以上人口も49年連続で増加している。1943年には全国で143人だったが、2021年では86,510人となっている。特筆すべきは女性が88.4%を占めている。
平均寿命の推移
平均寿命の推移(完全生命表による) 2021年は簡易生命表による |
年 |
1990 |
1985 |
2000 |
2005 |
2010 |
2015 |
2020 |
2021 |
男 |
75.92 |
76.38 |
77.72 |
78.56 |
79.55 |
50.75 |
81.56 |
81.47 |
女 |
81.90 |
82.85 |
84.60 |
85.52 |
86.30 |
86.99 |
87.71 |
87.57 |
- 令和3年の簡易生命表が厚労省から先般発表されたが、平均寿命は、男性81.47歳、女性87.57歳(平均寿命は、0歳児の平均余命)となってる。
令和2年よりわずかだか短くなっているのは、コロナ禍の影響と考えられる。
100歳以上高齢者数の推移
100歳以上高齢者数の推移(完全生命表による) 2021年は簡易生命表による |
年 |
1990 |
1985 |
2000 |
2005 |
2010 |
2015 |
2020 |
2021 |
男 |
680 |
1,255 |
2,158 |
3,779 |
5,868 |
7,840 |
9,475 |
10,060 |
女 |
2,618 |
5,123 |
10,878 |
21,775 |
38,580 |
53,728 |
70,975 |
76,450 |
- 厚生労働省の「人口動態統計」によると1989年に死亡者数が、最も多かった年齢は男性で79歳、女性で81歳であった。2018年では 男性は85歳、女性は91歳になっている。100歳まで生存する確率を見ると、2040年みおいては男性の42%が90歳まで、女性の20%が100歳まで生存するとみられている。
- 健康寿命の伸びも表のように着実に伸びを示している。健康寿命は日常的・継続的な医療・介護に依存しないで生命維持し、自立した生活ができる生存期間と定義されている。
平均寿命と健康寿命 <平成30年高齢社会白書より>。 |
|
2001 |
2004 |
2007 |
2010 |
2013 |
2016 |
男性 |
平均寿命 |
78.07 |
78.64 |
79.19 |
79.55 |
80.21 |
80.98 |
健康寿命 |
69.40 |
69.47 |
70.33 |
70.42 |
71.19 |
72.14 |
女性 |
平均寿命 |
84.93 |
85.59 |
85.99 |
86.3 |
86.61 |
87.14 |
健康寿命 |
72.65 |
72.69 |
73.36 |
73.62 |
74.21 |
7479 |
- 厚生労働省の「人口動態統計」によると1989年に死亡者数が、最も多かった年齢は男性で79歳、女性で81歳であった。2018年では 男性は85歳、女性は91歳になっている。100歳まで生存する確率を見ると、2040年には男性の42%が90歳まで、女性の20%が100歳まで生存するとみられている。
- 健康寿命のデータを見ると、2016年の男性の場合約9年近く不健康な時期を過ごしていることになる。
健康寿命はWHOが提唱した指標で、「平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間」と言うことであるが留意しなければならないのは、日本の健康寿命の内容とはかなり違いがあると言うことである。日本の健康寿命は、国民生活基礎調査において、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に影響がありますか」という設問に対して「影響があると」と答えた人を健康で無いと判断している。国民生活基礎調査は、3年に1度の調査であり、サンプル数も多いとは言えずデータの信頼性に問題が無いか議論されている。
- 高齢になれば、耳が聞こえ難い、逆光だと人の顔がよく見えないなどいろいろな障害があって当たり前になる。このような軽い障害は日常生活に影響があると言えばあるし、日常生活には大した影響はないと感じている人もあろう。設問に対してどう答えたかが問題である。
- 高齢者の要介護者数は、2013年度末で65歳以上で569.1万人、65歳以上の人口は3,186万人なので、17.8%に当たる。82.2%の高齢者は少なくとも日常生活には問題なく暮らしていると言うことになる。
- 日本人の死因のトップ3は、がん、心疾患、脳欠陥疾患と言われている。この三大疾患にかからなかった高齢者は現在でも元気に暮らしているといわれているが、認知症の患者数が増加しているのも事実である。認知症は世界的に増加傾向にあり、国際アルツハイマー協会では、世界の認知症患者数は、2015年に約6,480万人が2050年には1億3,200万人に達すると予想している。
日本の認知症患者数は、現在約450万人とされているが、2025年には700万人を超すと厚生労働省は予測している。これは、単純に考えれば、5人に1人ということになるが、この数字に恐れることなく日常生活に気をつけることしかない。
- 人生が長くなると言うことは、認知症や要介護の期間が長くなる場合もあるということをしっかり認識する必要がある。
- 中高年の主な年齢の平均余命は次のとおりである。政府は、健康寿命の目標を2040年までに、男性75.14歳、女性77.79歳まで伸ばすとしている。
高齢者の平均余命(主な年齢別) |
|
50歳 |
60歳 |
70歳 |
75歳 |
80歳 |
85歳 |
90歳 |
男 |
令和2年 |
33.04 |
24.12 |
16.09 |
12.54 |
9.34 |
6.59 |
4.49 |
令和3年 |
32.93 |
24.02 |
15.96 |
12.42 |
9.22 |
6.48 |
4.38 |
女 |
令和2年 |
38.75 |
29.42 |
20.45 |
16.22 |
12.25 |
8.73 |
5.85 |
令和3年 |
38.61 |
29.28 |
20.31 |
16.08 |
12.12 |
8.60 |
5.74 |
出典: 厚生労働省 簡易生命表
人生100年時代は健康格差の時代
- 歳をとればとるほど個人差が顕著になってくる。とくに、健康格差、情報格差が大きく日常生活に影響してくる。まず、健康のためになにが必要なのかを認識し、健康維持に努めことがもっとも大切なことである。
健康格差について、筑波大学大学院の久野譜也教授は次のような趣旨を著書『100歳まで動ける体になる「筋リハ」』で述べている。
- 50代になると、めっきり体力が低下し、生活習慣病を発症する人も出てくる。階段を急いで登ると息切れしたり、反射神経が鈍くなり瞬間的な動きができなくなる。
- 60代では、よろけたり、転んだりすることが多くなったり、座った姿勢からすっと立てないこともある。膝や腰などあちこちの関節が痛むこともある。
- 70代では「サルコペニア」になることもある。歩く速度が遅くなり、チョコチョコ歩きになる人もでてくる。足のふくらはぎが細くなり、筋力が一気に激減する場合もある。
- 80代以降は、「フレイル(身体機能、認知機能が低下して虚弱や老衰が進んだ状態)」になることもある。
『100歳まで動ける体になる筋リハ』参照 |
- 健常→サルコペニア→フレイルその先にあるのは寝たきりや要介護という状態である。
- サルコペニアとは、加齢に伴って起きる骨格筋量の減少と機能の低下を言う。筋量の低下は40歳前後から起こり、部位的には、大腿四頭筋や腹直筋が顕著と言われている。BMI、腹囲、年齢、握力により推定できる。
- 筋量の低下
- 筋力の低下ー握力計で判断
- パフォーマンスの低下ー歩行速度で判断
- サルコペニアを予防するには、レジスタンス運動(筋トレ)と有酸素運動、タンパク質の適切な摂取が重要。
人生100年時代は格差の時代
- 大事なことは、うまく年を重ねることであり、これを Successful Ageing 成功加齢という。単に若作りしたり、不老を目指すのではなく、首尾よく年を重ねることであり、そのためには老いを意識することも大事なことといえる。「老い」を意識したときに、いかに心身を対処すべきかが見えてくる。
- 加齢により生物学的な変化が生じる基礎的老化を防止することはまず不可能であるが、緊張感、心理的なトラウマ、病気、傷害などのストレスから基礎的老化を促進する副次的老化は、遅らせる事が可能と言われている。
- もちろん、現実は厳しく、病気や死に対する不安、介護問題、子どもとの同居・別居などに関わる問題、配偶者の死別後の人生、生きがいの喪失などの問題が起きることも予想される。
- いかに高齢期を生きるかは、個人の考えにより一律に定義すべき事ではないが、年齢にとらわれない生き方が大事であることは、だれにでも当てはまる。
「若さ」が絶対という社会構造から抜け出すことを考えるべきで、加齢による衰えは間違いない事実であり、いたずらに若さを追い求めることは止めて、むしろ老化を遅らせる努力はすることが必要だろう。
|